ブルセラ・カニス(犬ブルセラ)は、細菌兵器となりうるか ②
2007年 02月 10日
さて、生物兵器としてのブルセラ菌についてです。
生物兵器とは、病原微生物による病原性を利用して、人、動物、植物に害を与える兵器です。
現在厚生労働省では、生物テロとして使用されることの可能性の高い病原体・毒素として、炭疽症、天然痘、ペスト、ボツリヌス菌、炭素症の4種類が挙げています。
生物兵器としての条件は、
(1)大量生産が可能なこと
(2)生産法が簡単であること
(3)殺傷力が強力であること
(4)敵にに防御法がないこと
(5)何を使ったかの検出が困難なこと
(6)潜伏期間も武器になること
(7)安定性に富むこと
(8)体内への導入がいろいろなルートから有効なこと
(9)爆弾、砲弾、ミサイル弾頭に入れても適地で爆発したときの熱や高圧の衝撃に耐えうること。
(以上、特別寄稿:生物兵器 出典:海外医療 (2002年3月号)より 引用)
ブルセラ菌が生物兵器として使用された歴史ですが、
1950年と1951年にユタ州のダグウェイの実験場で、生物兵器爆弾の野外実験が行われました。
その時ブルセラ属菌爆弾がB29から投下され、300匹のモルモットで効果が確かめられました。
アメリカでは1969年、ニクソン大統領により攻撃的生物兵器開発の中止が決定されています。
アメリカ以外にもブルセラ属菌を生物兵器として研究している国もあります。
ブルセラ属菌による生物兵器としての効果は、殺傷能力と言うよりも、繰り返す熱等の風邪に似た症状を繰り返し再発することより、兵隊達の戦意消失、戦えない状態にする目的にあるようです。
このようにブルセラ属菌が生物兵器として実験された歴史があるわけですが、これらに使用されたブルセラ菌はブルセラ・カニス(犬ブルセラ)ではなく、ブルセラ・メリテンシス(羊、ヤギ)、もしくはブルセラ・スイス(豚)と思われます。
生物兵器として利用、研究される目的となる微生物は、上記4種類以外にも多くあります。
また過去に生物戦のために製造、研究された天然毒には、貝毒、ヘビ毒、クモ毒、カビ毒までも含まれます。
特に生物兵器は植物もその目的になりますから、穀類の黒さび病、稲のいもち病も生物兵器となりうるのです。
さてブルセラ・カニス(犬ブルセラ)を、生物兵器として過大に問題視して良いものなのでしょうか。
ブルセラ・カニスが生物兵器として利用されるには、生物兵器の重要条件である、人への感染力の強さが必要という点で、大きな欠点があるからです。
またその感染の症状も、生物兵器としての目的を達するほどの重篤な効果があるとは思えません。
今、犬のブルセラ症が話題になっている中、「細菌兵器として利用された」という表現が犬ブルセラを指すに際しては適当ではないと思います。
これは、ブルセラ・カニスを軽んじても良いということではありません。
あくまでも、生物兵器としてブルセラ・カニスを論じることで、より恐れる必要はないという私の判断です。
《参考サイト》
横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課
国立感染症研究所 感染症情報センター
大阪府環境農林水産部動物愛護畜産課
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部附属動物実験施設
おおり医院 医療情報サービス
生物兵器とは、病原微生物による病原性を利用して、人、動物、植物に害を与える兵器です。
現在厚生労働省では、生物テロとして使用されることの可能性の高い病原体・毒素として、炭疽症、天然痘、ペスト、ボツリヌス菌、炭素症の4種類が挙げています。
生物兵器としての条件は、
(1)大量生産が可能なこと
(2)生産法が簡単であること
(3)殺傷力が強力であること
(4)敵にに防御法がないこと
(5)何を使ったかの検出が困難なこと
(6)潜伏期間も武器になること
(7)安定性に富むこと
(8)体内への導入がいろいろなルートから有効なこと
(9)爆弾、砲弾、ミサイル弾頭に入れても適地で爆発したときの熱や高圧の衝撃に耐えうること。
(以上、特別寄稿:生物兵器 出典:海外医療 (2002年3月号)より 引用)
ブルセラ菌が生物兵器として使用された歴史ですが、
1950年と1951年にユタ州のダグウェイの実験場で、生物兵器爆弾の野外実験が行われました。
その時ブルセラ属菌爆弾がB29から投下され、300匹のモルモットで効果が確かめられました。
アメリカでは1969年、ニクソン大統領により攻撃的生物兵器開発の中止が決定されています。
アメリカ以外にもブルセラ属菌を生物兵器として研究している国もあります。
ブルセラ属菌による生物兵器としての効果は、殺傷能力と言うよりも、繰り返す熱等の風邪に似た症状を繰り返し再発することより、兵隊達の戦意消失、戦えない状態にする目的にあるようです。
このようにブルセラ属菌が生物兵器として実験された歴史があるわけですが、これらに使用されたブルセラ菌はブルセラ・カニス(犬ブルセラ)ではなく、ブルセラ・メリテンシス(羊、ヤギ)、もしくはブルセラ・スイス(豚)と思われます。
生物兵器として利用、研究される目的となる微生物は、上記4種類以外にも多くあります。
また過去に生物戦のために製造、研究された天然毒には、貝毒、ヘビ毒、クモ毒、カビ毒までも含まれます。
特に生物兵器は植物もその目的になりますから、穀類の黒さび病、稲のいもち病も生物兵器となりうるのです。
さてブルセラ・カニス(犬ブルセラ)を、生物兵器として過大に問題視して良いものなのでしょうか。
ブルセラ・カニスが生物兵器として利用されるには、生物兵器の重要条件である、人への感染力の強さが必要という点で、大きな欠点があるからです。
またその感染の症状も、生物兵器としての目的を達するほどの重篤な効果があるとは思えません。
今、犬のブルセラ症が話題になっている中、「細菌兵器として利用された」という表現が犬ブルセラを指すに際しては適当ではないと思います。
これは、ブルセラ・カニスを軽んじても良いということではありません。
あくまでも、生物兵器としてブルセラ・カニスを論じることで、より恐れる必要はないという私の判断です。
《参考サイト》
横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課
国立感染症研究所 感染症情報センター
大阪府環境農林水産部動物愛護畜産課
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部附属動物実験施設
おおり医院 医療情報サービス
by pareana-club | 2007-02-10 09:22 | お勉強したこと